偽霊幻裏道士

| コメント(0)


    ゴーストバスターズ・フェイク
    偽霊幻裏道士


おいらは10年以上、小説家をやっていたんだが、みんなエロ小説なので、女性の読者も多いこのサイトではちょっと、という物も多いんだが、珍しくエロのない小説も幾つかあるので、再録なんだが、シリーズ物を何回か掲載しようと思う。ゲーム雑誌に書いた小説です。1980年代が舞台です。全部で4回です。前回分はこちらにあります。

電飾トロピカル帝都



なんで今キョンシー?なんて思いますが、1970~80年代生まれの人は大ブームで怖がりなら見ていた思い出があるのでは...
子供の時は寝れなくなったりとか。ファミコン調のアレンジがあり、そんなノスタルジーを感じられます。
楽曲が超おもしろい、そして9nineメンバーのダンス、うっきーの声が超かわいい!これにつきます。
キョンシーのオリジナルはホラ一要素がとても強く、仲間が壮絶な死に方をしたりトラウマになるレベルだったと記憶しています...確か。
もちろん9nineうみにーのドラマは小さい子供とも安心して見て楽しめるものですよ!!

   ほら、憑き物がいるよ

「おばけがいるよ」
 突然そんなこと言われたら誰だって驚く。さっきからボーッとボクを見ていたオタッキーな眼鏡のチビ男、ハンディのパソコンをひらいてパタパタたたいてそう言ったのだ。
「えっ?」
 何が起きても驚かないストリート・シンガーとしては情けないことだが、ギターを弾く手をおもわず止めてしまった。
 ここは基隆。台湾の北のはしっこ、大阪への船賃を稼ぐための街頭ライブ。街いちばんの繁華街、愛四路の夜をにぎやかにかざる海鮮屋台にまじって歌っていたのだ。
「おばけ、ゆーれい、......違うな、ニホンゴ、なんたっけ。そうそう憑き物だ、ポコペン」
 流暢な日本語でカレは言う。ところで最後の『ポコペン』てなんだ?
「あなた、若い女の霊が憑いてます。おはらいしないと悪いコトあるです、ポコペン」
「金なら、ないッ」
 観光客めあてのあら手の詐欺師かな? と考えたら奴は名刺を出してきた。
「わたし、アマチュア。金いらない」
 あらためて近くのマクドナルドで話を聞くと、本職は海賊版TVゲームの製造業。キョンシー映画の見すぎなのか素人霊媒士となり、コンピューターを使った除霊を研究してると自己紹介した。
「年齢は? 名前、住所は? そう、あちこち歩いてる。住所不定、無職......と」
 こまかなデータをパソコンに入力しながら金縁眼鏡を光らせてマジメ顔。
「ニホンの古い、白い建物、京都......じゃないけどそーゆーところが怪しいあるね」
 なるほど商売になるわけない。さんざんデータを聞き出したあげく、携帯電話とパソコンをつなげてどこかと通信。
「霊媒ネットに問合せたんだ。裏日本てなんだい? オモテの日本に対するパラレル・ワールドみたいなもの?」
 こんな調子だったりして。逆におはらいなんて五分で終わりだ。もちろん無料だった。
「で、幽霊は逃げちゃったかい? もうダイジョブなの?」
 聞いてみると年齢不詳の海賊版ゲーム業者はニタッと笑う。
「せっかくの研究材料、大事にしなきゃ」
 ありがたいことに、カレは新潟までの航空運賃を出してくれた。そのかわり、いっしょについてくるという。
 飛行機の中でもノートパソコン打ちに忙しい男を眺めながら、ひょっとしてとり憑いたのは、幽霊なんぞよりむしろこの電脳ポコペン小僧のほうじゃないかと不安になるボクなのだった。

   セーラー服と土蔵と

 くすんだ古い街並みにセーラー服がよく似合う。初夏の陽射しに輝いていた半袖の白い制服の記憶。......けど今はまだ雪だ。
「ほー、これが日本の裏世界、そーいえばなにやら背筋が寒くなってきたある。」
 暖房のきいた列車から出たんだ、そんなのあたりまえ。
「キミには見えるんだろ? ボクにとり憑いてる幽霊ってヤツがさ。美人かい? どんなオンナなんだ?」
 道々の説明によれば、とり憑いているのは幽霊とは限らないらしい。生霊ってのもある。ボクを恋い焦がれて、そのあまり生きながら霊となってしまった......なんて、そんな女がいるわけないか。
 セーラー服は紺だった。
 こないだここを訪れたのは初夏、夏服がまぶしく輝いていた。その、おなじ学校の少女たちが、登校帰りだろうか、紺のオーソドックスな制服に黒っぽいコートで道を行く。手袋だけがカラフルだ。
 この古い街には土蔵造りの商店が並んでいる。年寄りが多い。けどよそみたいに追い払われることもなく、少女たちにクスクス笑われるだけが難だ。あと、たえまなく雪が降りつづき、ひどく寒いのと。
 まだ、この街に春はやってこない。
 かじかんだ指に息をかけつつギターを弾いた。寒さでナチュラルなビブラートが効いて声にはむしろ良かったりして。
 とり憑いていた電脳ポコペン野郎は生まれてはじめて体験する寒さにめげて向かいのマクドに逃げこんでしまった。アジア・ツアー帰国第一声ライブの客は乳母車みたいのを押してボーゼンと立ちすくむ老婆と、離れてクスクス笑う女子高生と。
 で、何が楽しくて、こんなコトやってるかっ? どこでも聞かれるんだ。あのポコペンにも聞かれた。よっぽど儲かるのか......って。儲かるわけない。宿代もなく、わずかなツテをたどって居候をしつづける日々。
 アコースティック・ギターをかき鳴らし、マイクなしの肉声で唄う。誰だってやってみればわかるだろう。知らない街でもそれだけで、キミは街の景色そのものになれる。百年もまえからそこで唄っているみたいに、誰も関心をしめさない。
 たまに、ごくたまに、熱心に聞いてくれる女の子もいたりする。......そうか、この街にもそんな娘がいたっけ。おなじ場所でおなじスタンダード・ナンバーを唄いながらデジャヴューのようによみがえる記憶。
「戻ってきたのね」
 フィニッシュのテンション・コードの響きが消えたところで、声をかけられた。
 ピンクの手袋、両手を握りしめた少女。離れて隠れたところにいたから、唄ってるあいだは気がつかなかった。
 今は、冬のセーラー服。
 ほとんど黒に近い濃紺のセーラー服の上下、ストッキングも黒、コートも黒、みんなほかの女の子とおなじ制服だ。
 けど、すぐわかる。
 この街にいた五日間、まいにち聞いてくれた女の子。細い身体にやわらかで長い髪。おおきな瞳とうすく紅をひいたみたいに艶やかな唇。もちろん田舎の高校生だもの、すっぴんなんだろうけど。
「ああ。......寒いね、この街は」
 その言葉に美少女はさびしげに笑う。彼女はこの寒い街で暮らしているのだ。
「あの、これ。読んでください」
 そのままクルッと。商店街から脇道へと、逃げるように走り去った。崩れかけた白い土蔵の続く裏道を眺めながらボクは、手に残された手紙を握りしめる。......そう、あの娘は、いつ戻ってくるかわからないボクのためにこの手紙を、毎日、持ち歩いていたのだ。

   八カ月遅れのラブレター

「うん、うん、におうにおう。やっぱりこの街が怪しいポコペンあるね」
 マクドのポテチをかじりながら謎の中国人はほざいた。
「なあ、なんで幽霊がコンピューターで捕まえられるんだ?」
「霊魂や生き霊は、つまり時空間の歪みのあいだに存在するエネルギーの一種だと思われていたわけあるね、けどワタシ考えた。むしろ時空間の歪みがニンゲンの情念を一種の情報として蓄積することによって......」
 以下略。
 つまり、こいつは何もわかってない。どこかで聞き齧った『裏日本』という言葉をパラレル・ワールドの裏の日本だとかんちがいするようなヤツだ。
「......だから不確定性を応用したこの入力装置からのデータをユングの超自我によって演算処理することによって......」
 こういうことになるととたんに雄弁になる日本語を聞き流しながらボクは、黙ってラブレターを握りしめる。八カ月遅れで届いた少女からの手紙を。
 旅のスポンサーを粗末にはできない。とりあえず街に一軒しかないビジネス・ホテルにポコペンをほうりこんでおいて、ボクは少女からの手紙をひらいた。
 ギターのお兄さんへ......という出だし。内容は、どうってことない、普通の女の子のひとりごとみたいな。好きだとも、交際してくれとも書いてない、何のための手紙なのか理解できない。
 また戻ってくるだろうか、それともどこかで見ているだろうか。
 彼女のことを想いながらしばらく唄っていたけれど、何も起こらずに終わった。ただ身体が凍えただけ。街を行くセーラー服もまばらになり、空も暗くなる。
 次の日は地元の人もひさしぶりという快晴になった。といってもぜんぜん暖かくなんかないけど。まっ、気分だけはいいか。本職のために新しいゲームソフトの買出しにでかけたポコペンは夕方戻る。
 朝から唄った。
 例によってマクドの向かい、銀行のショー・ウインドーの前。年寄りの多い街、足をとめるヒマ人も多い。ギター・ケースに小銭を投げてくれる人もいる。
 のんびりと、缶コーヒーやマクドのポタージュで身体を暖めながらの街頭ライブ。うん、これなら悪くないな。なんて、午後になってそろそろ出始めた女子高生をチラチラ眺めて思う。彼女は来るだろうか。
「ねえねえ、ほら、聞いてこうよ」
 きれいな女の子と視線が合ったりすると、それだけでもちょっと嬉しい。セーラー服の美少女率を計算したり、ミニスカのネーチャンの寒さにめげない素脚を鑑賞したり、などとまあ、歌とは関係なくそんなコトを考えていたりして。
「がんばってえ~っ」
 なんて、自転車こぎながら明るく手をふってくれる娘もいたりして。
 女の子には、その土地の『顔』というのがある。たとえば大阪っぽい顔とか、名古屋っぽい顔とか。ボクは宿なしのストリート・シンガー、日本中どこでも行く。
 裏日本は......いや、今じゃそういう呼び方はしない、ポコペンじゃないんだから。日本海側だな。女の子たちの顔立ちもなんか演歌っぽいというか、哀しみ本線日本海みたいな顔をしている。
 鳥取、福井から新潟にかけては、日本の知られざる美少女ラインだ。
 都会のコギャルっぽい女子高生ときたら、肉感的なボディにぱっちりした瞳、明るく派手な表情と、ゲーノージンっぽくていいんだけど、ね。
 でも、こっちの娘はちがう。
 どことなく脚が短かくてお尻がおっきい。ナチュラルな古典的日本人体型は、まあ愛嬌ってやつだ。けど、雪で洗われた素肌、静脈の筋がほんのりと透けるような肌は、ぜったいに都会の娘より透明度が高いと思う。
 パラパラと、来たり去ったりする少女たち。めずらしいモノを眺めたような気分でいるんだろうけど、ふっ、ふっ、実は眺めているのはボクの方なんだよ。
 ......いけない、いけない、こんなコトばっかし考えてるから、女の幽霊なんかにとり憑かれるんだ。
「また、来ちゃった」
 ポツリとつぶやく美少女がひとり。
 さびしげなひとえまぶた。
 傾きかけた陽に輝くやわらかな髪と、わずか紅色に染まった頬、ミトンのピンク手袋で口元を隠して、でも、そのかげで唇が微笑んでいるみたい。
「また、聞かせてください。歌を」
 ほかの女子高生とはちがっていつもひとりぽっちの彼女。それに今はたまたま誰も観客はいない。ボクは、あのラブレター?の返事のかわりに、スローなラブ・バラードを唄いはじめるのだった。

   冷たい唇

 お邪魔虫の電脳ポコペン野郎は雪道に慣れず遅れがち、で、ボクと彼女はほとんど二人っきり気分で歩いた。
「おばあさんが入院してて、今はだから一人暮らしなの」
 街の、あのメインストリートからさほど離れてないはずなのに、あたりはとっぷりと暗く暮れた雪、また雪の白い世界。
 一人暮らしの小さな家は、すっぽりと雪に包まれていた。
「ふう、......わたし、やっとニンゲンに戻った気分あるよ」
 暖かい炬燵と、ありあわせだと謙遜するものの、けっこうな鍋料理。眼鏡を曇らせてポコペンはニコニコしていた。
「彼はね、台湾から来たんだけど、コンピューターで幽霊を退治する研究をしてるんだ。......おい、ボクにとり憑いたオバケの正体はわかったかい?」
 おちついたところでさっそく、ノートパソコンたたくポコペン。モヘアのセーターにエプロンと、主婦っぽいいでたちの美少女はクスクスと笑う。
「霊は、データ情報に姿をかえて、どっかにもぐりこんだか。マズいあるね、どっかにバグがあるはずポコペン」
 この場の雰囲気とはまったく関係なくコンピューターの世界に没頭、オタクってヤツはどこもおんなしだ。
 ボクは、彼女を見ている。彼女は、ボクを見ている。それがおかしくってクスッとか二人で揃って笑ったりして。
「似合うね、そのかっこうも。キミっていい奥さんになるかも」
 せっかくだから泊まっていって......と彼女は言った。でも、そんなことも出来ない。
 鍋料理で元気いっぱいのポコペンは、先に立って雪道を歩く。ボクは北陸の美少女とゆっくり歩く。快晴、限りなく散りばめられた星たちが身震いする寒さ。冷込みはひどくきつい。
「もう、いいよ。道、わかるからさ。キミが冷えちゃう」
「うん、でも、もう少し」
 黙りがちの時間。でも、別れの刻がきてしまう。ボクは街のあかりが見えるところで立ちどまった。
 うつむいてしまった少女。そっと手を頬によせて顔をあげさせると、その瞳から涙がひとしずく落ちる。で、......もう言葉はいらなかった。
 唇が触れあうだけの軽いキス。
 冷たい深夜の空気のせいなのか、彼女の唇は少しばかり冷たいのだった。

   憑きものの正体

「霊はニンゲンには見えない」
 宿に戻るとポコペンは意外なことを口にしはじめた。
「ただ、いるな......って感じ。フィーリングかな? それだけ。台湾では安定していたのが、今ではすごく不安定。わかんないよ」
 頭をかきむしって考えこんだり、パソコンたたいたり。もっともボクにはどーでもいいことで、まだキスの余韻が脳味噌を支配している。
 ......このままこの街で暮らしたら。あの娘と二人っきりで、雪に埋もれて、なんて。
「おはらいが効いたんじゃないか? それとも寒くって凍えてるかな?」
 パソコンも日本の寒さでおかしくなったのか、調子が悪い。海賊版製作のために買い集めたソフトがうまく動かない。
 せっかくの快晴も一日限りのこと、翌日はまたどんよりと曇った、今にも雪がチラつきそうな朝だった。
「コンピューターの調子悪い、ワタシ、台湾帰るよ。いろいろ世話になったね、また遊びに来てポコペン」
 故障のパソコンとともに元気をなくしてしまったポコペン。けどボクには考えがあった。日曜だけど今日のライブはお休みだ。
「その前にひとつだけ。ねっ、ねっ、つきあってくれよ」
 マクドナルドの向かい、銀行わきから古びた土蔵造りのならぶ裏道へ。たしかにボクは道を覚えていた。ほら、ここにお地蔵さんの祠があって、小川を渡ってすぐに......。
「あれ、あの家はどこだ?」
 雪に埋もれて雪原みたいに変わり果てた畑のなかにこじんまりとたたずんでいた小さな、彼女の家。
「ゆうべは暗かったから。だれかに聞くといいあるね」
 杖がわりの乳母車をのろのろ押しながら、そこにやってきた老婆、さっそくポコペンが呼び止めた。
「あの、ここに家、ありませんですか? 小さな家で、かわいいスクール・ガールの住んでいるポコペン」
 わかりにくい台湾人のニホンゴのかわりにボクがゆっくり説明した。老婆は顔の表情を変えないままで黙ってうなずく。
「あの娘もかわいそうなことになったわいなあ、あれは去年の、秋のことだったか」
 と、その瞬間だった。
 バッグの中のノートパソコンが狂ったような電子音をけたたましく響かせる。
「おたねばあさんが死んでみなしごになった娘はなあ、街のほれ、銀行んとこに出とった唄うたいのお兄ちゃんに連れてってもらって東京さ行くだっつってよお」
 耳も遠く目も弱くなっているらしい老婆は、それがボクのことだとは気がつかないまま話しつづける。
「毎日、待っとっただが、風来坊の唄うたいは薄情モンじゃ、いっかな戻ってこん。そしたらある晩そこになあ、酒に酔ったおっきな車がやってきて......」
「たいへんアルヨ、たいへんアル、パソコンが、ワタシのパソコンが」
 老婆の独白がポコペンのけたたましい叫びで中断された。
 ひらかれたパソコンの液晶画面でありとあらゆる色彩が乱舞している。断続的な電子音の響きとともに。
 目と耳のきかない老婆をのぞく二人が見守るうちに、色彩のノイズは一人の少女の寂しげな笑顔に、電子音は弱々しい声に、しだいに集約されていく。
「......連れてって......」
 デジタルの髪をなびかせて、顔をあげた少女が言う。ぎくしゃく不自然に動く唇。けれどどこかで気持ちだけはしっかり伝わってくるような映像。
「あ、あの娘がオバケだったよ、おはらいしなきゃ、とり憑かれるある」
 キョンシー映画に出てくるような黄色い札をかかげて震えるポコペンに、ボクは「やめろ」と声をかける。
「......幽霊だって人間だ、幽霊だって生きているんだよ」
 そしてボクは、あれからずっと一枚のフロッピーを持ち歩いている。そのどこかに、デジタルのノイズとなって彼女はひそんでいるはず、なのだ。

 



コメントする

欧米人の見た幕末日本
千代姫モールえすの屋店
空気清浄機情報
ポルノ雑誌の昭和史 (ちくま新書)

ネットゲリラの夏祭り

ルンミーブルースバンド

チョトマテクダサイ
戦場のテディベア
on the road
追悼・宇佐英雄/柳ケ瀬ブルース

アーカイブ

  通販専用水着屋さん

帆船Ami号

ずっと富士山